
■過労死の認定基準
昭和63年までは、労災の認定基準は『発症の当日に、従前の業務に比べて、特に過激な業務に従事したことによる肉体的・精神的負担がなければならない』とされてきました。当時は日曜日に家で倒れたら労災になりませんでした。 それが問題になり、63年に評価期間が1週間になり、平成13年から6ヶ月に延長され認定基準が厳しくなりました。 その流れを受けて元気に退職金を貰って退職した後であっても、過労死・過労自殺と認定されるケースが出てきました。 残業時間が月100時間を超えて、病気になれば、労災という考え方が確実に一般社員や、ご家族に浸透しています 労災の認定基準を管理職の方にしっかり理解してもらうということが、過労死対策の第一歩だと思います。 働き過ぎ対策で管理職の役割は非常に大きいのです。

■問題点
時間外労働時間の計算式
月の時間外労働時間=1か月の総労働時間−その月の総暦日数/7×40
健康問題を考える際の時間外労働時間とは、正確に言えば、割増賃金を算定する場合の残業時間とは違います。健康問題を考える際の時間外労働では休日労働を含めた1か月の総労働時間が、その月の法定労働時間をどの程度上回っていたかが問題になります。 時間外労働時間の算出式は1か月の総労働時間−その月の総暦日数/7×40で求められます。つまり、残業時間は、賃金を決定するための時間、時間外労働時間は健康を考えるための時間ということになります。時間外労働には休日労働時間も含まれ、有給休暇は除外されます。 例えば5月の法定労働時間はどんな会社・職種であっても177時間です。 労災の認定基準である、月100時間の時間労働というのは、5月は277時間社内にいた人のことを言います。 残業時間は賃金の支払いを伴います。把握するのは容易なのでどうしても過重労働対策に、残業時間を使いがちです。 就業時間は同じであっても、残業時間はパートタイマー、一般社員、裁量労働者と雇用契約によって異なります。 健康管理に使う時間は雇用契約がどんな形態であっても、会社が違っても平等でなければおかしいのです。 貴方の会社は時間外労働時間を使って、過重労働対策を立てていますか?

■過重労働健康診断
過労死・過重労働対策に関しては、今までいろいろな指針や通達などが出されています 特に過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成14年2月)が、そのまま法律になったと、に考えている。担当者の方が大変多く、現場は相当混乱しています。
■間違えやすい点
・100時間の時間外労働者が希望すれば実施の義務があります。
・健康診断ではなく、問診つまり面談です。
・毎月実施しなくてはいけません。
・面談者は医師であれば、産業医でなくても大丈夫です。
・50人以下の事業所は平成20年から実施
過重労働の面談は、健康診断のように、しっかりしたメニューや対象者が、はっきりと決められているわけではありません。 何の用意もしないまま、社員を面談させる会社もあります。慣れない先生は相当戸惑うと思います。 希望者であれば、問題ありませんが、義務として行うと、当然産業医、社員にとっても、つまらない面談になってしまいます。 忙しい医師と忙しい社員が、残業と健康という退屈なテーマで話し合いをするわけですから、よほどしっかり準備しないと、多くのトラブルと困難を伴います。過重労働対策の基本は定期健康診断の実施のその後のフォローです。 忙しいことを理由に定期健康診断を受けさせないまま、過重労働をさせている会社が少なくありません。 現在の体調、仕事の状況を医師が正確に把握できるよう、事前にこうした資料を整えておくということが面談を有意義、かつ円滑に行うためには大きなポイントです。
・労働時間、労働日数、時間外、休日労働時間
・業務の具体的内容、地位、責任の程度
・定期健康診断結果
・現病歴、既往歴の調査結果
・現在の心身の自己チェック結果
・過去の面接指導結果と対処について
■解決策
時間外労働時間の適正な把握 正確、迅速に、総労働時間を把握することが、過重労働対策の基本です。裁量労働制が導入される企業が多いなか、正確に勤務時間を申告しない社員・させない会社が多くなっています。 これでは過重労働対策はできません。残業時間は賃金を払う時間、時間外労働時間は健康管理のための時間と割り切って、正確にタイムカードをつけて貰いましょう。時間外労働を把握するやり方としてネットワーク管理、セキュリティーカードを使うやり方があります。
■時間外労働時間を減らすための一口アドバイス
・悪い残業と良い残業
過労死は働き過ぎという悪いライフスタイルによって起きる生活習慣病です。
残業をなぜ生まれのでしょうか?
人手が足りない。能力がない。段取りが悪い。家に帰りたがらない。上司が帰らない。残業することに意義を感じている。生活残業、体調不良といったものが考えられます。 残業時間の増加というのは、うつ症状(集中力や判断力の低下など)による結果であることも意外と多いのです。仕事の量が変わらないのに、残業が増えてきたら、要注意です。 残業が多い ひょっとして病気ではいう発想が大事です。 一向に減らない残業の裏には何があるのか、 仕事の量が多いか?仕事が面白くないのか?新しい仕事に慣れてないのか? 上司や仲間の残業は多いのか?私生活がはでになっていないか?家庭内うつではないか? 病気になっていないのか? 残業の減らない社員をこうした目でみてください。 悪い残業は減らせることができる残業です。 「忙しい」の一言ですませてしまうと問題の本質を見失ってしまいます。 正確に時間外労働時間を記録し、悪い残業から減らしてください。
■5Sの推進
5Sとは整理、整頓、清掃、清潔、しつけの頭文字をとった言葉です。 安全衛生は整理、整頓に始まり、整理整頓に終わると言われるほど、5Sは安全衛生の基本です。 5Sを推進すれば、不要物が減り、職場は整理整頓された状態になり、有効な時間、スペースが広がります。 デスクの4Sを徹底して、作業空間を広くすれば、VDT作業による肩こり、疲れ眼もよくなり、残業時間も少なくなるはずです。pCの中の4sも勧めると残業の削減にもなると思います。」 利用できる空間も多くなり健康作りにも役立ちます。 物の4sができない事業所に時間の4sつまり過重労働が削減できるはずはありません。 人は捨てても物を捨てられない事業所が多くなっています。 いらないものはどんどん捨てることが健康作り・過重労働対策では大切です。
■有給休暇の取得促進・代休の完全消化

このグラフは、わが国と欧米諸国の週休日(土曜、日曜)、祝日数、年次有給休暇の取得日数等について取りまとめた資料です。 これによると、わが国は年間の祝日数は計15日と欧米諸国と比べて多くなっていますが、平成14年の年次有給休暇の取得日数が8.8日と少ないために、欧米諸国と比べて、年間の労働日数が多くなっていることがわかります。 欧米では、年次有給休暇は権利としてすべて取得(消化)することが常識です ヨーロッパでは、1カ月程度の年次休暇を消化しています。 日本は、祝日が多いだけで、1週間程度の年次休暇しか消化しない社員が大変多いのが、特徴です。 日本は残業する人が多く、完全に休養できる休日も少ない傾向にあります。 このグラフからも、わが国の労働時間制度の課題として、年次有給休暇の取得促進が重要であることがわかります。
■産業医面談の活用
面談は病気を発見、治療を行うために実施されるものではありません。 労働の時間や内容が心身に負担をかけて、体調を崩していないか。持病が悪くなる可能性がないかを確認し、問題があれば、治療を強化するとともに、仕事の内容、時間を調整するために行われるものです。 就業判定のできない人間ドックや健康診断を面談の代わりにすることは、意味はありません。 残業の可否を決定するために行われるものだということを、忘れてないようにしないと いけません。 とにかく保健指導だけでなく、残業ができる体調なのか?就業判定をしてもらうということが大事です。過重労働対策の大きなポイントは、就業区分を守って仕事をすることです。 会社の実情がわからない主治医にはオーダーメイドの就業区分は作れません。 就業区分を決定するのは産業医の大きな仕事です。仕事と健康を上手にマッチングできる医師を産業医に選ぶことは、安全配慮義務を果たす意味でとても大切なことです。 うつ病は心と、仕事の内容、人間関係、過労死は勤務時間と、健康状態がミスマッチによって起きる病気です。主治医、会社、社員が連携し、バランスを失って病気にならないよう、持病が悪化しないよう仕事の量、質を調整することが大事です。

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